2010年 04月 28日
ベン・メリア~静かなる遺跡~
まずはやはりアンコール・トムとアンコール・ワットは抑えておかないと。何を見なくても、この2つは見ないといった意味ないし。
残りの2日をどのように過ごすのかでずいぶん迷った。
性格的に行き当たりばったりなもので、その日になってみないと何がみたい気分かわからない・・・っていう思いもあったけれど、せっかくのアンコール遺跡観光、どうせならちゃんとガイドをつけたほうがいい。
すべての遺跡を制覇するのは無理なので、まずは何をみるかを決めないと。
マルローの小説のモデルになったバンテアイ・スレイはどうしても見たかったので、その日は郊外の遺跡をまわる日に決めた。まわるといっても、それぞれがけっこう離れているので、午前で1箇所、午後1箇所。
どこにしようかガイドブックをめくっていると、1枚の写真に釘付けになった。
ジャングルの中で壊れかけた遺跡の写真だった。
ここに行ってみたい。
ベン・メリアはシェムリアップから60キロほどのところにある。
お昼ごはんを食べた食堂から、まっすぐに伸びている赤茶けた砂の舞う埃っぽい石の道を歩いていく。
しばらく歩くと、わたしの視界に飛び込んできたのは、すっかり崩れ落ちた石の建物だった。
ベン・メリアはアンコール・ワットとほぼ同じ広さを持つ寺院だというが、まわりはすっかりジャングルに囲まれているため、その広さはわかりにくい。建物もほとんど原型をとどめていないので、どのくらい大きかったのかなかなか想像するのは難しい。
アンコール・ワットも最初に発見されたときはこんな状態だったという。
少しずつ、修復もされているそうであるが、ほとんどは崩れ落ちたまま。アンコール5大遺跡の中でも、もっとも崩壊がすすんでいる遺跡だそう。
一応、見学しやすいように、木の板がはってあったりする。
まさしく廃墟である。
かつては「水辺の花のテラス」と称えられたというので、きっと美しい寺院だったのだろう。
でも今は美しさよりも、時間の経過と人間の作ったものの儚さを感じる。
それに比べ、自然の力は朽ち果てるということを知らないのだろうか。
どんな小さな隙間でさえも、みつけて根をはるがじゅまるの生命力には、ただただ圧倒されるばかりである。
観光客でにぎやかだったアンコール・ワットやバンテアイ・スレイに対し、ここは訪れる人もほとんどいなく、ひっそりと静まり返っていた。
その静けさが、またこの朽ち果てた遺跡をいっそう神秘的なものにしている。